輝く断片のあつめかた

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掌編「絶望という名の希望」日向永遠

すごく久しぶりに創作しました。

おもいきりダークな内容です。相変わらず意味不明ですが読んでいただけたら嬉しいです。
読後、あまりいい感じはもたないかも・・・・

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絶望という名の希望  日向永遠

 家族に先立たれた悪夢のような事故。一人残された家。男手一人での生活に嫌気がさしていた。職場での人付き合いも、空々しく感じていて、言葉は素通りしていく。
死のうと思い、荒波が打ち寄せる自殺の名所の岬に着いた。昼間に下見しておいたので暗くても大体の場所は覚えている。しかし、小石に躓き、足首を捻ってしまった。ずきずきと痛む。そこにしゃがみこんでしまった。這って進んだ。岩をつかみ、痛む足を引きずり進む。先の方から波が砕ける音が聞こえる。もう少しだ。顔をあげ進む。岸壁まであと十メートルくらいまできた。時折、波の飛沫が体にかかるほどになった。この痛みも波の冷たさも、そして勿論、今までの世界も無常ももうすぐおさらばだ。世界との決別。それが今の望み。希望。その希望だけをたよりに進んだ。足の痛みが、今まで生きてきた、世界を象徴しているかのように苛む。しかしその痛みから逃れる事が、もうすぐ出来るのだ。ただ、耐えていた今までとは違う。この一歩こそが希望なのだ。

 突然、声が聞こえた。
「小父さん、死にたいの」顔をあげ闇を透かし見る。すると少し先の岩の影から少女がのぞいているのが見えた。大人とも子供ともいえない年齢。長い髪が顔の半分を隠している。鋭く美しい目が刺すように見据えている。ぞくりとした感覚が背中を走る。体温が下がるのが分かる。
「小父さん、死にたいの?」少女が再び問うた。言葉を失った私はただうめくばかりだった。少女が近づいてきた。そして、私の右手を無造作に踏みつけた。痛みが足から掌に走る。「この痛みが死に近づく事になる?」少女は酷薄な笑みを浮かべている。痛みの中でもその美しさで麻痺しそうだった。「これは人助け?」踏みつけた足にこねるように体重をかけてきた。 飛沫なのか涙なのか滲んで見える少女の右手にははっきりと傷跡があった。「私の右手と同じにしてあげる」さらに力がこもる。自分の右手が不気味が音をたて砕けた。激痛に意識が遠のく。「どうせ、死ぬんでしょ?」少女は壮絶ともいえる笑みを浮かべる。「君は誰なんだ」自分のうめき声は蚊の様に小さい。「君は誰なんだ?」叫ぶ。
今度は聞こえたようだが少女は無言で足に力を込めた。足を挫いているとはいえ何故抵抗しないのか。突然、疑問が沸く。右手から突然、重さがなくなった。次は頭だった。全体重をかけ顔を踏まれる。靴底がゴム状だったのが幸いだが、それでも激痛だった。「これで死ねる?」少女が凄む。意識が遠のくなかで少女の顔をもう一度見たいと願った。一瞬、見えたその顔は妖精の様に美しかった。そして意識をなくした。

 気が付くと自分が目の前にいた。岸壁の石くれのうえに横たわっている。目の前の自分はしかし死んではいないようだ。もぞもぞと動いている。恐る恐る、足元をみる。その足はさっきまで自分を踏みつけていた少女の足だった。入れ替わったのか?
(違うよ。目の前のこの男は私じゃない。入れ替わったりしてない。あなたが私に取り込まれただけ)目の前の自分はゆっくりと崖に近づいていく。そして、そのまま奈落に落ちていった。少女(自分)は、崖にある岩陰のくぼみに入った。そこに座ると外界と隔絶された。(つぎの自殺者を待つのが私の役目、死を与えて、死を見つめることが私たちの役目)(生きているのか?自分は?)(死ぬことはできないのさ)少女と自分の意識の会話は続けていくうちにどちらがどちらとも区別がつかなくなっていった。絶望と希望が入り混じった。
(了)

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掌篇「何処に君はいるのか」日向永遠

皆さんお久しぶりです。約1か月ぶり更新です。
今回の地震、津波の傷跡の大きさは計り知れない影響があって、どう気持ちを整理してよいかわかりませんでした。自分には何ができるのでしょう?どう向き合っていけばいいのでしょう?そんなことばかり考えていた1か月でした。

 余震が何回もつづいています。不安はつのるばかりです。

 でも怯えていてもダメですね。自分は元気だと発信することも大事な事だと気が付きました。自分はちっさいけれど、その自分のこのブログを読んでくれる人がいる。それだけでも大事だと気が付きました。なので少しづつですが、更新を再開することにします。
 自分にできる一つがブログを書く事でもあります。

 改めて宜しくお願いいたします。

 以下は地震の事を思いながら書いた創作です。
 事実とは関係ありませんのでご注意ください。

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「何処に君はいるのか」日向永遠 

瓦礫の中を直人はさまよっていた。そして瓦礫となった家を見つける。

「何処にいるんだ。幸」たった一人の肉親。妹。まだ二十歳にもなっていない。倒壊した家の前で直人は泣き崩れていた。何時間も。日が沈み、夜露が直人ぬらす。涙とまじり頬を流れる。闇が包み込む。風が鳴く。ビューと鳴く。
寒さに震える。けれど行く宛が何処にある。声が聞こえる。

「兄さん。兄さん。泣いていてはダメ。生きていくことが兄さんたちの役目なんだよ。今は泣いていても、明日は歩きださなくては。歩けるだけ歩いて。その先に私はいるわ」

 風が鳴る。
「幸。側にきてくれ。もう一度、顔を見せてくれ」直人は顔をあげる。月もない夜。ひとつの灯りもない。一面、闇の底。原始の広野ではないのだ。近代の街が闇に沈んでいる。遠くに波の音がしている。人は何処にもいない。
「一人じゃないよ」直人は左右をみる。誰もいない。幻聴か。でも幸の声だった。
「生あるものはやらなくてはならない事があるんだよ」
「幸。やめてくれ。何処に希望があるんだ。幸の為に今まで生きてきたんだ。幸がいないのに僕は生きていく意味がない」
「何を言っているの。兄さん。生きていく事自体が意味があるのよ。たとえて誰も知っている人がいなくても生きて
いかなくてはいけないのよ。兄さんには解っているはず」

「幸。生き残る事は罪悪じゃないのか。自分が幸の替わりに死ねばよかったんだ」

「何を言っているの。そんなこと選べる事ではないわ」
「見えているだけが世界じゃない。一人では見えている範囲はとても狭いわ。今も昔も変わりない。情報の届かない昔の方が真実に近い場面もあったのよ。世界は多面だよ。生きていれば解る事が無限にある。そして人は無力じゃない。微力ではあるかもしれない。けれどその小さな力が世界を動かしているんだよ。兄さんだってそんな事わかっている。目を開けば見えることがある。涙で曇った目では見えないことが世界にはある。私はいつまで兄さんと一緒にいる。世界の誰とでも一緒にいる。生きていて兄さん」

 風がなり、波がなる。東の空が白んでくる。
「日の光は暖かいな」涙でゆがんだ太陽をみる。

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何ヶ月過ぎた、瓦礫はまだあちこちに残っている。
その瓦礫の片隅にタンポポが咲いている。
「こんな所にも咲くんだな、幸はタンポポが好きだったよな」
「幸が言うように生きていくよ。生きていく限り、あきらめない。それが生きている者の勤めだから。だけど、時々は、休んでもいいよな」
 直人には幸の声がいつも聞こえる。それは、心にあった。
「兄さん。大丈夫だよ」
「そうか・・・・黙っていても明日はくる。けれどその明日を作っていくのは生きている者たちとそれを心から支えている幸たちだ。無駄は死も、無駄な生もない。なにも出来ないと嘆いているだけじゃなくて、普通に生きていくよ」

優しい風が吹きタンポポが小さく揺れた。それはまるで微笑んでいる様に見えた。
 
(了)


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掌編「目覚め」日向永遠

「目覚め」日向永遠


粒子は粒であると同時に波である。すべての物質は波からできている。(ある科学者の言葉より)

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 いったいなんの集まりなのだろう。その中の一人になっているのにそれが解らない。四方八方から人々があつまってくる。千人は越えている様に見える。

********

 朝、食卓についているときだった。はじめは解らなかった。
「雪、何ぼんやりしてるのよ」母の声が聞こえた様におもえハッとした。
「学校に遅れるわよ」言われる事は母が声を出す前に解った。私は慌てて鞄をつかみ玄関に向かった。その時、なにか釈然としないものがよぎった様に思った。

 教室へ滑り込むように入った。慌てて席につく。隣の席の良太君は風邪をひいて休みだった。反対側の孝枝が教えてくれた。また違和感がはしる。この感覚は何のだろうか。
 「先生がすぐくるよ」私の言葉に孝枝が席に着いた。孝枝が不思議そうに自分を見た。と同時にいかつい顔をした山田先生が教室に入ってきた。

 山田先生は私を見た。そしてみんなを見た。
「みんないるな」それは問いではなく断定ように聞こえた。そうなのだ。みんないるのだった。その時、教室は学校に。学校は町に。町は国に。国は地球に繋がった様に感じた。これが違和感の根源なのだと悟った。

 授業が始まった。いつもと違う。教科書の内容がいつもよりすんなりと頭にはいってくるのだった。そして現代国語の授業の時、それは起こった。なんと、物語の中の登場人物が目の前に現れたのだった。自分だけだろうか?周りを見ると気がついた。数人が自分の方に目を向けているのを。

 物語の中で人が傷つく。すると自分のどこかが傷つく。それが生々しく感じられる。と同時に、どこかで違うところで新しい生命が生まれているのも知る。

 学校が終わり、家に帰った。猫のミアが私の方に向かってくる。いつもよりひとまわり大きくみえた。ミャアとないた。自分もニャアと鳴いた。ミアはすました風に外にでていった。今頃気がついたのかとでも言う様に。

 父の母が目の前でご飯を食べている。何かがいつもとちがうのだがうまく言えない。母の食べている焼き魚の味が自分にもわかった。

 食事がおわると父と母は黙って、外に向かった。私もあとに続いた。
 玄関をでると、多くの人たちが海の方に向かって歩いていた。驚いた事に猫や犬。ネズミや小さな虫たちも海の方に向かっているのだった。

 不思議な光景の筈なのに不思議に思えない。何故なのだろう。今日はいったい何の日なのだろう。不安は無かった。どちらかと言えば期待の方が大きかった。

 砂浜に近づくにつれて、人はどんどん増えた。犬や猫もこんなにこの町にいたのだろうかと思えるほど沢山いる。ほとんど、密着している猫もいる。

 浜辺に着いた。

 空き地がないほどの人。犬、猫、あらゆる生き物がいた。どのくらいの時間がたったのだろうか。

 月が輝いていた。満天の星が瞬いている。星は自分の中にもあった。周りの人々、犬、猫が輝きだした。人々は服を脱ぎ始めた。子供も大人も、男も女も、そこには区別はなかった。老いも若きもみな美しかった。自分も服を脱いだ。それがすごく自然な事に思えた。ああ、自分もかがやいているんだなと思えた。
 
 月が自分の一部になる。自分が月の一部になる。すべての人たちと犬たちと猫たちと自分が繋がっているのが解った。

 波打ち際にいた人々が海の中に入っていった。恍惚とした表情。まるで神々を見ているようだった。

 ******
 
翌日、自分のベットの中で目がさめた。全裸だった。
世界がかわった様に思えた。ミアがおはようと声をかけてきたのがわかった。

 学校に向かう。教室にはいると机の数が昨日より少なくなっていた。半数近くの生徒が消えていた。そういえば、家は、自分とミアだけだった。母と父がいなくなっていたのに突然気が着いた。だけど何故か寂しさがない。

 昨日、あれだけの人々が海に消えたのに、浜辺には一体の死体もなかった。犬も猫の死体もない。虫さえなかったのだった。

 波の表情がいつもより豊かになっていた。

私があそこにいるとおもった。

(おわり)

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良く解らない話です。

自分の表現したいことの半分もあらわせませんでした。

感想も書きづらい話かもしれませんがよかったら教えてくださいね。
掌編 | コメント:10 | トラックバック:0 |

掌編「砂浜に寝そべって僕たちの行く末を考えていると夜空に星が流れた」日向永遠

 皆さんこんばんは~★

 読書があまり進まないので、また掌編です^^

これは 以前、書きました「少年たちの挽歌」より前に書いた作品です。

例によって意味不明な内容となっております。

良かったら感想、聞かせてくださいね。

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「砂浜に寝そべって僕たちの行く末を考えていると夜空に星が流れた」日向永遠

 一匹のモンシロチョウが強風を避け翅を休めている木陰に僕たちは佇んでいた。僕たちミッチとサクラとイチロウ、そして僕だ・・・は思い思いの格好でくつろいでいた。
「あっ、ひばり!」ミッチが叫ぶ様に言い、そして指さした先をみると、そこに黒い点のようにひばりが見えた。
「ただのひばりさ」僕は言った。これで新しい話題が出来たわけだ。僕たちはさっきから話が尽きてしまっていて四人とも気まずい感じだったのだ。
「でも見て、ぜんぜん前に進んでないじゃないの。あのひばり」とサクラ。見ると本当にそうだった。一生懸命、羽ばたいているのが分かるのに前に進むどころか、後退さえしていた。
「可哀想・・」とミッチ。すると今まで煙草をぷかぷかしていたイチロウが言った。
「可哀想?そんな事はない。あのひばりは、いま、一生懸命、強風に逆らって飛んでいる。飛ぶ空がある奴はいい、例えそこに強風が吹いていてもだ。可哀想なのはあのひばりを見ている事しかできない俺達さ」
「それさ!僕たちはこらから飛ぶ空を探しに行こう」僕は叫んだ。
「そうさ、僕らはあてのない旅人さ」とイチロウ。
「それより・・・」とサクラ「あたし、お腹がすいたわ」
   ★
 僕たちは町に着いた。イチロウとサクラはガラクタから作った置物やブローチ、ネックレスや人形を地面にひいたシートに並べ売る事にした。今日はその一日目。
 僕とミッチは町をぶらぶらと歩いていた。一日交代で店番をする事にしたのだ。だから僕とミッチは今日は休業日。
 僕たち二人は色々な店をみて回った。もちろんお金を持っているわけではないから買うわけじゃない。
「ねえ、あれなんか素敵じゃない?」
「うん・・・君なら似合うんじゃないかな」そんな事を話しながら僕らは歩いた。たわいのない遊び。
「ねえ、あたしたちこうやっていると恋人に見えるかしら」
「見えるかもな」僕はドキドキしながら言った。
 僕たちはアジトに帰った。イチロウとサクラも帰っていた。そこはとある公園のベンチ。
「駄目だった、全然売れなかった」広げた掌には数枚の百円玉があるだけだった。
   ★
「海が見たい・・海が見たいわ」とミッチ。僕らは殆ど飲まず食わずの状態だった。
「海?」とイチロウ。
「海!」とミッチ。
「う・み??」とサクラ。
「ねえ、海をみにいきましょうよ」僕たちは暫く黙っていた。
「それもいいかもな」とイチロウ
「砂浜に寝そべって俺達の灰色の未来について思いをめぐらすのも悪くないだろう。しかしそこから何かが生まれるとは思わないけどね」イチロウは詩人だと僕は思った。字を一つも書かない詩人だとも・・

 僕たちは幾つもの町を通り過ぎて海に近づいて行った。バスに乗る事が金銭的に難しかったのだ。無理をすればできないことだろうが極力出費はしたくなかった。
 華やいだ夜の町を通り過ぎた時、空から小雨が零れ落ちてきて、僕たちは小走りに古ぼけた駄菓子屋の軒に逃げ込んだ。ちょっとの間に雨は激しくなりそして通り過ぎていった。
 
 土産を残して。
 始めにそいつを見つけたのはサクラだった。「あれ、何?」と指さした先を僕は見た。
それはずぶぬれになった、ほんとうに小さな子猫だった。ニャーン。ミャーン。子猫は泣きながら地べたに座っていた。そして僕らの方を物悲しげに見た。
 ミッチが僕とイチロウの間をすり抜けて子猫の所へ行きそして抱き上げた。子猫はミッチの胸の中で目をつぶった。
「さあ、行きましょ」とミッチ。
「その猫、連れて行くのか」と僕。
 僕たちは四人と一匹になり、またゆっくりと歩き出した。
 僕たちは夜も眠らずに歩いた。

   ★
 海に着いたのは夜も開け始めた早朝。子猫は元気になったようだった。
 僕たちは太陽の昇るのを白い湿った砂浜に寝そべりながら眺めた。海面にキラキラ輝く白く赤い光。巨大な眩しい太陽。寄せては返す波。そしてその波の音色。早朝のひんやりとした空気。
 僕らそれらの前に寝そべってはいられなくなり、さっと立ちあがった。そして、一回、二回と深呼吸。
 みんなも僕にならった。
「ねえ、泳がない?」といなんりミッチは服を脱ぎ捨てて海に飛び込んでいった。
「もうすぐ夏、けれどまだ夏じゃない・・・春の陽の中で海に泳ぐか・・」とイチロウ。
 僕たちは裸になって泳いだ。子猫もだ。
   ★
 飛ぶ所は・・・何も見つける事はなかった。僕たちは今までも飛んできた様に思う。羽ばたいてきた様に思う。飛ぶ事は生きる事だって事は何も今知った事じゃない。
 僕たちは今まで飛ぶ気もなしに来たんじゃないのか?飛ぶのに場所なんて関係ないんじゃないのか?
   ★  
 夜。星の降る様な夜。
 風、吹きぬけて髪をなびかせる。
 月光、海辺に降り積もる。
   ★
 僕たちはまだ海にいた。砂浜に寝そべって。
「私たちこれからどうなるのかしら・・」とサクラ。楽天家のサクラらしくない。
「そんなこと、分からないよ・・・でもそれは僕らしだい」
「そうね、・・じゃあ私たちこれからどうするの?」
 イチロウが言った。
「僕らは四人だ、何故四人なんだ?」
「四人じゃないわ、四人と一匹よ」とミッチ。
 その時僕は夜空に流れる星を見た。
「イチロウ、お前・・」
「そうさ、俺達はしょせん、一人さ、俺は君たちと別れようと思う」と言いながらイチロウは立ち上がった。そして歩き出した。
「イチロウ待って」サクラはイチロウを追っていった。
   ★
「二人か」
「二人じゃないわ。二人と一匹よ」
砂浜には二人の足跡。イチロウとサクラの・・・。
 僕らは抱き合ったまま動かなかった。
「暖かい」とミッチ。
 夜よこのまま明けないでくれ。
   ★
 僕たち、僕とミッチの横を子猫は軽快に歩く。あての無い旅だけれど、僕たちの足はしっかりと大地を踏んで歩く。
 僕たちに悲しい事はなにもない。僕たちは今飛んでいるのだから。

 (了)

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掌編 | コメント:2 | トラックバック:0 |

掌編「本に住むもの」 日向永遠

皆さん、こんばんは~★

凄く久しぶりですが、短いお話を書きたくなって、即興で作ってみました。
即興といってもなんとなく頭の片隅にあったイメージを膨らませたものです。

どんな感想をもたれるか、教えていただければ嬉しいです。

ハカリの物語の途中の息抜きみたな・・・

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「本に住むもの」

 本だけが友達だった。友達はいっぱいいた。魔法使い、ドラゴン、孤児、盲目の先生、歌の上手な少女、殺人鬼、サイコ、本を開けばいつでも誰かが待っていてくれる。
 ファンタジーの設定で主人公が本の世界に迷い込んでしまい、大冒険をするのがあるけれど、あんな素敵な事がわたしに起きないかなっていつも思っていた。たとえ、狼男においかけられても、きっと素敵な騎士があらわれて救ってくれる。そして言う。
 「素敵なお嬢さん、お怪我はありませんか」わたしは頬をそめながらええ、大丈夫ですって言うの。だけどそんな事はいままで一度も起きなかった。そんな事を思っているからだれも友達がいないのかもしれない。いつも学校の図書館にいりびたり、この学校の誰よりも本を読んでいる自信がある。本には独特の匂いがあってその匂いに包まれているだけで幸せ。でもその幸せを誰も理解してくれない。何故なんだろう。ああ、今、この本の中から、魔女が現れて、わたしを連れてってくれないかな・・・
 
 家に帰り、夕飯もそこそこに、読みかけの本を開く。この本は図書館の奥の奥にあっていままでだれも読んでないみたいだった。学校ができた頃から何十年もあったはずなのにわたしがはじめて読むみたいだった。題もかすれていて良くみえない。扉にも見開きにも題が書かれていない。昔の本でとても字が小さくて、読みづらいのだけれど、凄く不思議な雰囲気があって夢中になった。まだ、学校に行く事が一般的になっていない時代、二人の少女の友情の話。途中、素敵な青年に二人が同時に恋をして喧嘩になったり、同時に失恋したりしている。次はどうなるの・・・

 次の夜、その続きが気になって直ぐ本に飛びつく、なにか変だった。厚くなってる?
最後のページを見ると600ページだった。変な感じだったのだがきにしないで本をよみだした。学校では試験がはじまり二人は猛勉強をしているのだ、子猫が迷い込んできて、大慌て、その子猫が弱っていて二人は寝ずに看病する。当然試験の結果は惨憺たるもの。
二人は親から大目玉を貰う。そこまで読んで栞をはさむ。

 夢なのかしら。その夜、うつらうつらしていると二人の少女がわたしの顔を覗きこんでいる。そしてなにやら話している。

「ぐっすりねてるわ」
「だいじょうぶね」
「この子の大好きなお話を考えなくちゃ」
「それにはこの子の事をしらなくちゃね」
「そうね。そうね」

 二人の女の子はわたしにそっと蔽いかぶさる。わたしはなんか一冊の本になっていて彼女たちはそのページを凄いスピードで捲っている。

 やがて、ふたりの女子はお互いを見る。
「次のお話が決まったわね」
「うん」

 次の日、ページは700ページまで増えていた。わたしはもうびっくりはしなかった。

 ページを開くと本の中から二人の女の子がわたしにむかって声をだしてきた。

「いつも読んでくれててありがとね。わたしたちの始めての友達。さあ、この本の中で友達になりましょ。次はだれがよんでくれるかな」


(おしまい)


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